助成団体のご紹介 【NPO法人 Since】
助成団体情報
▽団体名▽
NPO法人 Since
▽活動場所▽
近江八幡市
▽団体の目的▽
不登校児童に学校以外での学べる居場所を提供し、社会性を養い、社会的に自立することを目的とする。
▽共同募金助成状況▽
令和3年度 広域福祉活動支援事業 「フリースクールの開催」
令和5年度 NHK歳末たすけあい助成事業 「地域ふれあい居場所事業」
レポート
今回は、近江八幡市で活動されている、NPO法人 Sinceの活動風景をレポートします。
Sinceは、安土駅から徒歩5分の場所にある一軒家で、週5日活動しておられます。
周囲は自然豊かな環境で、近くには沙沙貴神社や浄厳院があります。
朝10時30分、一階の和室では、代表の麻生さんを中心に子ども達が集まり朝の会が始まりました。
ホワイトボードを見ながら、一日のスケジュールの確認を行います。
取材日は、午前中はスタディサポート、午後からは部活とアート体験というスケジュールでした。
朝の会が終わり、子ども達は一階と二階の部屋に分かれて学習開始です。
何故部屋を別々にして学習しているのか、スタッフの岩木さんが教えてくださいました。
「一階は比較的学習意欲がある子ども達の部屋で、二階は学習に対してまだ意欲的ではない子ども達の部屋です。空間をふたつに分けて、それぞれ集中して勉強できるようにしています。」
とのことでした。
それぞれの子どもの学習状況に合わせて部屋を分けていますが、中には「昨日は二階で勉強したけど、今日は一階で勉強する。」と日によって部屋を行き来している子もいて、それを柔軟に受け入れ、対応されている印象でした。
二階の部屋では、「最初の30分だけ集中して学習に取り組もう」というスタッフの指導の下、子ども達は頑張ってプリントの問題を解いていました。
Sinceでは、子ども達一人ひとりの学力に合わせて、小学生は国語と算数、中学生は二教科プラス英語の学習をできるだけ進めています。
学習意欲を高めてそれを継続できるように、毎日、丁寧なコミュニケーションを心掛けているそうです。
Sinceはスタディサポートの時間を大切にしており、教員免許をもったスタッフが熱心に学習指導をしています。
学習指導に力を入れている理由をスタッフの岩木さんに尋ねると、こんな答えが返ってきました。
「僕たちスタッフは、四名中二名が元不登校当事者です。高校は不登校の子ども達が通う学校に通っていましたが、そこでの学習意欲の差によって、社会に出たときに大きく差がつくことに気付きました。僕たちはたまたま学習意欲が高いほうだったのですが、逆に意欲的ではなかった仲間達が社会に出たときに苦しんでいるのを目の当たりにして、学習の大切さを学びました。」
このような体験が、子ども達一人ひとりに寄り添った学習サポートに繋がっているようです。
さて、そんなSinceでは、「学習」と同じぐらい力を入れて取り組んでいることがもう一つあります。
それは「体験」です。
様々な体験を通して、子ども達が小さな「できた」を積み重ねることで、やがて大きな自信に繋がると考えています。
小さな「できた」の喜びは、子ども達の可能性を伸ばし、世界を広げる原動力にもなっています。
Sinceでの体験学習は、室内だけに留まらず、外遊びや地域の人や団体との交流も行っています。
体験学習と地域交流を大切にしているSinceでは、最近新たな取り組みを始めました。
地域の子どもと大人が自由に集える居場所として、月に2回、夕方から夜にかけて「ナイトステイ」という試みをしています。
ナイトステイでは、夜間孤立しがちなひとり親家庭や共働き家庭の子ども達に、地域の人々が寄り添い、共に夜を過ごす取り組みです。
地域のどなたでも気軽に来てもらえる様に、参加費は無料です。
地域の開かれた居場所づくりの一環としてはじめられたのですが、その背景には代表の麻生さんの強い想いがありました。
「全ての子どもが信頼できる大人に出会ってほしいと願っています。その大人はスタッフかもしれないし、地域の方かもしれない。まず大切なのは、子どものことを大切に思っている大人の存在に触れることだと思います。そのためにも、ナイトステイでは、多様な大人たちと子どもが繋がれる場でありたいと思っています。」
最後に、玄関でこんなものを見つけました。
子ども達の素敵なイラストの右下に「不登校の明るい未来」と書かれています。
不登校と聞くと正直ネガティブな印象を受けますが、Sinceの子ども達は、日々明るくのびのびと生活を送っています。
それは、保護者とスタッフだけではなく、地域の人々にSinceの子ども達の存在が受け入れられているからではないでしょうか。
地域との交流を大切にし、地域みんなで子育てをする環境を作り出そうとSinceは日々努力しています。